虚構の男がゴミ捨て場に不時着する。

極力毎日掌編。そうさユアグローもどき。或いは『絵のない絵本』の月。

パフェ

  私は庭の青々とした芝生の少し禿げたところに小さな穴があるのに気づく。近づいてじっと見ているとその穴にぞくぞくと蟻が潜っていくではないか。私は思わずその場所に屈んで手に持っていたパフェスプーンで穴をほじくりはじめる。

 初めは穴があるところの表面をざらざらと撫でるだけだが、少しずつ穴の周囲の砂を掻き出して穴を広げてゆく。あるところでえいやっ!とパフェスプーンを押し込むと穴の中にスプーンの尖端3分の1くらいがずっぽりと嵌って、そこからはオールでボートを漕ぐときみたいに穴の中をぐりぐりぐりぐりと抉っていく。

 そんなふうに夢中になっているときに声がきこえる。「それ以上、掘りすすめると私の庭の下に入ってしまいますわ」。

 我に返った私はパフェを食べている途中だったことを思い出す。

-No.45-