虚構の男がゴミ捨て場に不時着する。

極力毎日掌編。そうさユアグローもどき。或いは『絵のない絵本』の月。

飼い犬に夜

 飼い犬が昨日夜を食べたせいで、今日は日が暮れない。僕は僕で今日一日くらい夜が無くても構わないのだけれど、街中の人たちが困っているような気がして、仕方がないから「おい、犬、吐き出せ、夜を」と言っても時すでに遅し。どういう仕組かは知らないが、消化吸収できる夜の成分はしてしまって、栄養にもならなかった夜のカスを肛門から便として吐き出すのだ。刹那、夜が来て街を包む。それはとても中途半端な夜で星も月も何もなく、ただただそれは夜で真っ黒で。突然訪れた夜に虚を突かれた人々が夜に気づき明かりをつけるまでの数秒間、世界は完全な暗闇に包まれた。のだが、その数秒間、僕のところだけはキラキラと過剰に眩しくて、それは僕の傍で飼い犬が星と月の光をドヒャーっと放出しまくっているからなのだ!なんてこった!それでも家の明かりや街灯が点き出した頃には、何だよ、星と月の光ってこんなものなのか、LEDに隠されてキラキラがピラピラくらい、あんまり輝かないのだった。

-No.39-