虚構の男がゴミ捨て場に不時着する。

極力毎日掌編。そうさユアグローもどき。或いは『絵のない絵本』の月。

死物担当

 死んだ奴の机の上に白い花を置く。別に面白くはないが、面白い必要はないが、これが死物担当。さようなら、あの世で会おう。と声にはしない、心の声で軽く。別れはリズムよく、執着しないのが肝心。

 まさか出番があるとは思わなかった、新学期に僕はクラスにおいて何の係りもやりたくないが、クラスの全員が何かを担当しなければならない、何か楽そうな係りはないか、そうそれで死物担当。クラスメイトが死んだら僕の出番だ。しかし、本当にまさか出番があるとは思わなかった。

 それは事故死だと言う、先生は。事実は知らない。その死体は山の中で見つかった、とも風の噂で聞く。不審死のようなものだと。真相は知らない。ただそいつは死んだ。クラスで一番無口な奴だった。もともといるのかいないのかわからないような。そういう意味では初めから死物だった。死物担当の僕はそいつと一番よく話した。僕はクラスで二番目に無口な奴だった。

 そいつは空が好きだと言った。窓際の席でぼんやりと空ばかり眺めていた。どうして?と僕が聞くと、わからないとそいつは答えた。そうか、と僕は呟いた。

 白い花が置かれた誰もいない席を見つめている。僕は授業も聞かずに考え事をする。死物担当の責任を果たすには死を見届ける必要がある。だから死物担当の僕に死ぬ権利はないのだ。そんなふうに思う。生きるのには理由がいる。つまらないものでもいいから、言葉になるような理由が。

わからないと答えるにはまだ恐れがある。

 -No.40-