虚構の男がゴミ捨て場に不時着する。

極力毎日掌編。そうさユアグローもどき。或いは『絵のない絵本』の月。

卒業

 まだマフラーさえ満足に完成させられないのに悲鳴を編むなんて到底無理な話で、私は『さみしい』をあなたにちゃんと手渡せないでいる。気づけばクリスマスは過ぎ、バレンタインデーは終わって、私もあなたも明日には卒業してしまう。

 編めないで私は恋文を書く(その1)『お湯を注いだら3分間で出来上がってしまうような恋心でした。そうそんなインスタント愛情表現は「好きです!」』→それは気づいたらふにゃふにゃに伸びきった気持ちになって「はい、ボツ!」。それでも、私は恋文を書く(その2)『あじゃあじゃあばばばばばば。言葉にならないのが本当の気持ちだばだばだば!』→言い訳めいた曖昧な表現じゃ絶対に伝わらないので「はい、ボツ!」。

書けないで私は再び『さ』を編むことに挑む、「ぶかっこうでもいいからぶかっこうでもいいからぶかっこうでもいいから」とぶつぶつと呪文を唱えながら。母親曰く(その1)「あんた何言っているの?気持ちが悪いよ」。母親曰く(その2)「ち?」。私、変なことを考えて鼻血でも出ちゃったのかと思ったら、ああ違う!よく見たら私は『ち』を編んでしまっている!『ち』! そうは言っても時間がないので「えーい気にするか!」と(本当は気にしているからそんなことを)言って、私は私で私の『さみしい』を編むんだ。うおー、間に合わねーぞ、もとい、間に合わないわぁ♡

翌日、卒業式の後に私から突然『ちゐし』を受け取ったあなたは?????????目と口を丸くした!!!!!!(・○・)←あなた!!!!!!!!

あじゃあじゃあばば。さっき床にぶちまけてしまったインスタント麺がそういう文字列を成しているように見えた、というのは嘘だけれど、そういう気持ちがあるというのは本当のことだと思ってほしい。気づけば卒業から千年経ったはたはたは!

-No.42-