虚構の男がゴミ捨て場に不時着する。

極力毎日掌編。そうさユアグローもどき。或いは『絵のない絵本』の月。

2014-03-01から1ヶ月間の記事一覧

生きない

(一所懸命に生きたことで死んでしまったんだ)彼の死について僕は直感的にそういうふうに思った。それは決して褒め称えるような意味合いではなかった。 (一所懸命に生きてこなかったから僕は今も無事に生きている)つまりは不真面目な自分を肯定するだけの…

卒業

まだマフラーさえ満足に完成させられないのに悲鳴を編むなんて到底無理な話で、私は『さみしい』をあなたにちゃんと手渡せないでいる。気づけばクリスマスは過ぎ、バレンタインデーは終わって、私もあなたも明日には卒業してしまう。 編めないで私は恋文を書…

三分間

その店の場所はもう使われていない地下鉄の駅を確かに示している。 女はその入口から階段を下り(コツコツとヒールの音を響かせながら)、誰もいない改札を通り抜けて(それはとても優雅な足取りで)、薄暗い駅のホームに辿り着く。女は構内に一つだけ灯った…