虚構の男がゴミ捨て場に不時着する。

極力毎日掌編。そうさユアグローもどき。或いは『絵のない絵本』の月。

降水確率0%の日

 女が扇風機に薔薇の花束を投げ込む。深紅の花弁が細々に散ると途端に泡と化す。泡が扇風機に煽られて女の身体を包む。女は涙を流して部屋を去る。外に飛び出した女の身体を土砂降りの雨が打つ。雨は薔薇の香りを残して女の身体の泡を綺麗に流す。

 部屋に残された男は泡まみれの部屋で首を吊る。その身体が宙に投げ出され男の目が閉じられる。セットされていた目覚まし時計のアラームが雨音と共に響き、男は目を覚ます。男は哀しい夢を見た、と思う。

男はベッドから出てカーテンをゆっくりと開ける。部屋の中に眩しく日が射す。外は晴天である。そこで男は部屋の隅のゴミ箱の中に、飾られるように入れられた薔薇の花束を見つける。男はよろよろとゴミ箱に近づくと、そこで膝を折り、そのまま手を合わせて祈るような格好をして、ぶつぶつと何か呟く。

男は浴室に向かい服を着たままで頭からシャワーを浴びる。男はこっそり涙を流す。

 -No.36-