虚構の男がゴミ捨て場に不時着する。

極力毎日掌編。そうさユアグローもどき。或いは『絵のない絵本』の月。

蜘蛛

 一匹の蜘蛛の腹に細い糸を括って、虹を渡る。犬の散歩のようなスタイルで蜘蛛を従えて、僕はそれに導かれるように歩を進める。虹は足元で光を反射して、落ち着きなく動く蜘蛛の腹を順番に七色で染める。

 小一時間かけて、アーチ状の虹の最も高いところに着く。太陽がとても眩しく熱い。ここでは雲を見下ろすこともできる。蜘蛛は疲れを知らずに早く先に行こうとうるさい。喉が渇いたが、今日は飲み物を持って来ていない。

 また、小一時間かけて虹を降りたときには、もう街は湿気を忘れている。虹は次の雨を心待ちにして消える。

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