時計
我が時計は毎年、赤字額を増す一方で、今後の人員削減は免れないところであった。さしあたって盤面の数字を1から順に12まで解雇していったところだが、それでも赤字の是正には至らず、時計として我々が存続するためにはどうするべきか、といった会議が夜な夜な行われた。最終的に総務部人事課長の意見が汲まれ、長針のクビを飛ばすという決断がなされた。
そして今現在、長針をリストラしてしばらくの時が経ったが、短針だけでもある程度の時間の把握は可能であることがハッキリとした。つまり時計としての業務に今のところ大きな支障は出ていないということだ。我が時計の業績も持ち直し、時計内のあらゆる所で総務部人事課長の仕事ぶりが讃えられたが、一方で一本の長針が職を失ったことを憂う声はどの部署からも上がらなかった。
そして短針はとても疲れている。
-No.2-