虚構の男がゴミ捨て場に不時着する。

極力毎日掌編。そうさユアグローもどき。或いは『絵のない絵本』の月。

寿命

人の寿命を一目見ただけで一秒も違わず正確にわかるようになった男は、ある日、街を歩いていると、自分とほぼ同日同刻に死ぬ運命にある女を見つける。その場で声を掛け、それを機に交際に発展する。出会って一年後に結婚に至り、また子どもを授かったのだが、その子どもの予定された死亡日時も二人のそれとほぼ同じであったため、男はそのとき、事故か何かで家族そろって亡くなることを悟り、そのことに深く気持ちを落とす。

しかし、すくすくと育つ子どもの姿を前に、男は少しずつ立ち直り、今生きているこの時間を大切にしようと決意を新たに、一日一日を精一杯に生きていくのだった。

そして、とうとう今日がその日で、定められた時間まであとわずかなのだが、一体、これから僕たちの身に何が起こるのだろうか。男はそう思うと同時に、何があっても妻と子を守るのだと、今までに感じたこともないような強い気持ちが自分の奥の方からぶわっと立ち昇るのを感じる。

その家族が運命の通り死ぬことに変わりはないが。

-No.6-