虚構の男がゴミ捨て場に不時着する。

極力毎日掌編。そうさユアグローもどき。或いは『絵のない絵本』の月。

赤青

薔薇の花弁としては淡く在りすぎたその赤は周囲の赤を見下していたが、実際には一人だけ薔薇の色彩の役割を十分に果たせずにおり、それを知ってか知らずか、当人も漠然とではあるが自分が場違いであることを感じていた。

そんな折、「虹で働かないか」とスカウトされたその赤は『これが人生の転機である』と確信し、結果として今では七色の一員として立派に役割を全うしているが、そのプライドの高さは薔薇の頃と変わらず(もしくは薔薇の頃以上で)、虹の他の色たちを困惑させることもあった。

素直で純粋な青は、自身が空の青に馴染めずに虹の青となったという幼いころの境遇を、薔薇で在れなかった赤の境遇に重ね合わせ、それを淡い恋心として昇華していたので、赤の傲慢とも言える要求の数々を、丁寧に受け止めた。

「このあたりの色が少しだけ滲んでいるようだから、できるだけ均一にしてくださる?」と赤が言うと、「ええ、僕でよければ喜んで」と、青はその手で赤のいうところをやさしく撫で、「それじゃ痛いわ」「肌が傷つく」「本当に下手くそね」といった罵声を浴びながらも、その赤色を綺麗に均していったのだった。

 二人の子どもが虹の紫として働く未来もそう遠くない。

-No.7-