虚構の男がゴミ捨て場に不時着する。

極力毎日掌編。そうさユアグローもどき。或いは『絵のない絵本』の月。

クローゼット

 クローゼットの中に隠れて見つけてもらえなかった女の子が息を引き取った頃に、やっとその両親の喧嘩は終わる。二人はそもそも女の子がどこに隠れたかわからなくなったことが喧嘩の発端であったことを忘れている。

 話し疲れた二人は無言のままのベッドに向かう。服を脱ぎながらまた次の子どもを作ればよいとお互いに思い至る。そして激しくも懸命に行為に及ぶ。

 クローゼットの中に隠れて見つけてもらえなかった女の子がミイラになった頃に、やっとその両親の性交は終わる。二人はそもそも次の子どもを作ることが性交の目的だったことを忘れている。

 やり疲れた二人が目覚め、着替えの服を出すためにクローゼットを開けたときに、やっと女の子が見つかる。

「みぃーつけた!」と二人が同時に言って、かくれんぼはおしまい。

-No.10-