虚構の男がゴミ捨て場に不時着する。

極力毎日掌編。そうさユアグローもどき。或いは『絵のない絵本』の月。

 バーゲンセールが始まり、割引された羽に鳥たちが群がる。ある鳥は真っ白で巨大な根を、またある鳥は色鮮やかに荘厳な羽を、各々が自信の体躯に合う羽を求めてバサバサと商品の周りを飛び回る。

 その中にあって一羽のカラスは悲しそうな目をしている。そうして店員に「黒い羽はありませんか……」と力なく尋ねる。店員の「在庫切れです」の一言を聞いてカラスは重く肩を落とす。

 カラスの羽には損傷が目立つ。その姿に胸を痛めた店員が事情を問うに、「昔、事故に合い、新品の羽を買い直す金もなく、以後はずっと空を飛んでいない……」と。カラスは自身の少ない収入で以って何とか購入できる羽を求めて、このバーゲンセールを訪れた。しかし、その願いは叶わなかった。

トボトボとカラスが店を後にしようとするとき、店員が「そう言えば一組ありました!」と大声で言ってカラスに駆け寄る。「黒い羽ですよね!そうだ!一組あります!」と。

 店員に連れられカラスは試着室に入る。

 やがて試着室からカラスが出てくる、そこにペンギンの羽を携えて。羽を思い切り羽ばたかせてみるが、その身体が浮かび上がることはない。カラスは何だかおかしくて笑うが、その目にはうっすらと涙を浮かべている。

 空は遠い。

-No.20-