音符
自分の音楽を否定された男は、深夜の学校に忍び込み自分の持つ音符の全てをプールに投げ捨てる。空だったプールはみるみるうちにいっぱいになる。そしてそのプールに男は勢いよく飛び込む。
男は音符の中で自分の音楽を聴く。それは混じり合って騒音を成して、男にも耐えがたい音になっている。男の頭がガンガンと痛む。
男はプールから出たかと思うと大声を上げ、突如走り出す。そして学校に侵入したかと思うと一直線に音楽室に向かい、そこにあるすべての楽器に火を放つ。
しばらくして、徐々に学校の周りが騒がしくなる。夜に燃える校舎を囲んで野次馬が賑わっている。そこにサイレンと共に消防車が到着する。
消防隊員によって速やかにホースがプールに繋がれる、プールに溜まっているのが水ではなく音符であることを知らないで。そしてそのままホースから音符が放たれる。燃える校舎は音色に包まれ、野次馬たちは炎と音の魅せる世界に感動し息を呑む。
自分の音楽が肯定されたとも知らずに男は警察に捕まる。後日、男の名前が容疑者の蔑称を付して新聞の片隅に載るが、その名前に気を留めるものはいない。
-No.22-