虚構の男がゴミ捨て場に不時着する。

極力毎日掌編。そうさユアグローもどき。或いは『絵のない絵本』の月。

水鉄砲

「君も嫌いになるだろう」と男は言いながら、水鉄砲を構える。

男の前方数メートル先に、女は口を大きく開けて立っている。「きあいになあうわけがあい」と、女は口を開けたまま曖昧な発音でハッキリと言う。

男はピーンと右腕を伸ばして、女の大きく開けた口元目がけて水鉄砲を撃つ。放たれた赤い液体は女の口を正確に射抜く。

ぴちゃぴちゃ、ぴちゃぴちゃ。

 女は目を瞑り、口の中でその液体を味わう。そこで女はあるワインの名称を男に向かって言う。それは放たれた液体を正しく言い当てているが、ワインに興味のない男はその名前を知らない。

「君も嫌いになるだろう」と男は笑って言いながら、水鉄砲を放ち続ける。狙いを下げ、女の白いワイシャツの胸元をうっすらと赤く濡らしていく。

 ぴちゃぴちゃ、ぴちゃぴちゃ。

-No.24-