虚構の男がゴミ捨て場に不時着する。

極力毎日掌編。そうさユアグローもどき。或いは『絵のない絵本』の月。

カッププラネタリウム

 深夜に美しさに飢えた男は地下収納からカッププラネタリウムを取り出して、お湯を沸かす。カップの蓋を開けて小さな袋を取り出し、『夜の素』と『星屑かやく』をそれぞれの中に入れ、沸いたお湯を注いでから、再び蓋をする。そして台所から居間へ、お湯をこぼさないように慎重に運ぶ。

 三分後、カッププラネタリウムの蓋を開けると、湯気と共に夜と星屑が部屋中に広がる。即席プラネタリウムの出来上がりである。しかし、男はその美しさが物足りないと感じる。

 ふとカッププラネタリウムのパッケージを見てみると、そこには大きく『後入れきらきら流れ星が美しい!』というキャッチコピーがある。そこで男は『きらきら流れ星』を入れ忘れていることに気づく。

 男は台所に戻って『きらきら流れ星』の袋を探すがどこにも見当たらない。捨ててしまったのかもしれない、とゴミ箱を除いてみるがやはり見当たらない。

そういえば、と男は思い出す。この前、入れ忘れた『生オーロラ』がどこかにあったのではないか。男は台所の引き出しから『生オーロラ』の入った真空パックを見つけて、それを急いでカッププラネタリウムに投入するのであった。

美しいと満足して男は眠る。

 -No.33-