虚構の男がゴミ捨て場に不時着する。

極力毎日掌編。そうさユアグローもどき。或いは『絵のない絵本』の月。

普通

 僕は普通に大学に入って、普通に君に恋をして、普通に君と付き合うことになって、普通に色んな所にデートに行った。僕は普通に君が好きだった。

 僕は普通に大学を卒業して、普通に就職して、普通に一人暮らしを始めたけれど、普通に寂しくなって、普通に君を呼び寄せて、普通に君と同棲するようになった。僕は君を普通に愛していた。

僕は普通に君と結婚して、僕たちの間には普通に子どもが出来て、その子どもには普通の名前をつけた。僕たちは普通にパパとママになった。

僕たちの子どもは普通に育って、普通に学校で学び、普通に就職し、僕たちと同じように普通に恋をして、普通に結婚して、普通に子どもを授かった。そうして僕たちは普通におじいちゃんとおばあちゃんになった。

 僕は普通に歳をとって普通に弱っていった。その最期の時には普通に家族に囲まれていた。君も普通にそばに居た。僕は普通に微笑みを浮かべて普通に死んでいった。

君は普通に泣いていた。

 -No.34-