虚構の男がゴミ捨て場に不時着する。

極力毎日掌編。そうさユアグローもどき。或いは『絵のない絵本』の月。

愛煙家

 男は夜空の下の何もないところにいる。あたりには灯りの一つも見えず、ただ川の流れる音だけが聞こえる。

ジャケットの内ポケットから何かを取り出したかと思うと、男はその場にやや斜めに立ったまま真横にだらしなく腕を伸ばす。その手首は緩やかに垂れている。人差し指と中指の間には一本の煙草。

 刹那、男のすぐ傍で耳をつんざくような音。発射口から飛び出した熱と光を持った塊が煙草の先端をかすめてそれに火をつける。

 遠くで歓声が上がる。男は煙草を一喫みして空をじーっと見上げ、口からすーっと煙を吐く。

 煙の向こうに花火の残像を見て微笑む。

-No.26-